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管理を少しずつ「消していく」

――HDGの現在地と未来から考える、仕組み・文化・自主自律

最近、私は「管理の最高到達点は、管理を消すこと」という言葉について考えています。

この言葉だけを聞くと、規則を減らすこと、管理を緩めること、あるいは管理者が何もしなくなることのようにも聞こえます。しかし、北海道開発グループ(HDG)の現在地に重ねてみると、その意味はもっと具体的です。

消すべきなのは、目標や責任、規律ではありません。少数の管理者が毎日、確認し、催促し、判断し、問題が起きるたびに火消しをしなければ動かない管理の形です。

その代わりに残すべきなのは、信頼できるデータ、明確な役割と権限、再現できる業務プロセス、共通の判断基準、そして一人ひとりが結果へ向かって自ら動く力です。

HDGにとって、これは抽象的な経営論ではありません。個人の力で押し進める会社から、組織の力で成長する会社へ移れるかどうかという、現実の経営課題です。

HDGの現在地――売る力の成長に、組織の力を追いつかせる

2026年前半、HDGの売上は引き続き伸びました。国内卸売、海外輸出、三国間貿易、自社ブランド、輸入、店舗など、複数の事業が同時に動き、日本と中国のチームが地域を越えて業務を支えています。

これは、商品を見つけ、顧客とつながり、仕入先と調整し、複雑な条件を整理しながら売上をつくる力が、HDGにあることの証明です。その力は、現場で一つひとつの案件を積み上げてきた社員の努力によって生まれています。

一方で、私たちは別の現実にも素直に向き合わなければなりません。

売上規模が広がっても、利益とキャッシュが同じ速度で残るとは限りません。業務が増えるほど、経験や判断が特定の人に集中しやすくなります。顧客、商談、受発注、在庫、原価、会計、文書が複数のシステムに分かれ、部門間では検索、確認、転記、再説明がまだ発生しています。社長や一部の責任者が入らなければ、判断が進みにくい場面も残っています。

これは、社員の努力が足りないという意味ではありません。むしろ、多くの仕事が社員の補完、個別対応、責任感によって支えられてきたということです。

経営側が直視すべきなのは、その努力をまだ十分に「組織が繰り返し使える能力」へ変え切れていないことです。

HDGは、売上をつくる力があることを示してきました。次に証明しなければならないのは、売上を適正な粗利益とキャッシュへ変える力、人と管理コストを際限なく増やさずに事業を広げる力、そして一人の成功方法をチーム全体の方法へ変える力です。

したがって、HDGが管理を消していくための第一歩は、管理を急に減らすことではありません。個人に依存した管理を、仕組みによる管理へ移すことです。

管理が消えるのは「結果」であって、近道ではない

制度、データ、責任、権限が曖昧なまま管理者が手を引けば、組織に自由が生まれるのではなく、混乱が増えます。

今のHDGに必要なのは、曖昧な「任せる経営」ではありません。目標、責任者、判断できる範囲、完了条件、例外時の対応を、これまで以上に明確にすることです。

それらが業務プロセス、システム、共通認識に組み込まれたとき、管理者は初めて日常の細かな判断から離れられます。

これまで社長が一件ずつ確認していたことは、明確な決裁基準で処理できるようにする。熟練者の記憶に頼っていた仕事は、SOPやチェックリストに変える。会議で状況説明に時間を使うのではなく、事前に正しい数字を共有し、会議では次の行動を決める。

つまり、管理を消すとは、「人が人を追いかける管理」を「仕組みが人を支える管理」へ変えることです。問題が起きてから火を消すのではなく、工程の中で早く異常を見つける。全員が上司の答えを待つのではなく、現場が決められた範囲で判断する。その積み重ねの先に、管理されている感覚が薄いのに、秩序を保って動く組織が生まれます。

HDGの文化で、第一に置くべきものは「素直さ」

HDGの現在地を踏まえると、私たちの文化の第一要素は「素直さ」であるべきだと考えています。

ここでいう素直さは、上司に無条件で従うことではありません。異なる意見を持たないことでもありません。自分の体面、役職、過去の成功体験、部門の都合に縛られず、目の前の事実を正面から受け止め、必要であれば自分の判断を変えられることです。

HDGは現在、売上規模を優先する経営から、利益とキャッシュが残る経営への構造転換を進めています。この過程で最も危険なのは、問題が起きることそのものではありません。問題が正しく見えなくなることです。

商品原価や在庫の数字が正しくなければ、高度な分析をしても、間違った結論が速く出るだけです。低採算の取引が売上目標の達成としてだけ評価されれば、経営資源の配分を誤ります。現場が叱責を恐れてリスクの共有を遅らせれば、小さかった問題が、管理者による大きな火消しを必要とする問題へ変わります。

HDGにおける素直さは、次のような行動に表れるはずです。

素直な人とは、主張を持たない人ではありません。自分の主張を事実によって検証できる人です。

そして、素直さは社員だけに求めるものではありません。管理者には、事実が安全に上がってくる環境をつくる責任があります。問題を早く報告した人ほど責められる組織では、人はやがて問題を隠すようになります。

早期報告と放置を区別し、事実を伝えた行動は守り、その後の解決行動は厳格に追う。そうした管理があって初めて、組織に正しい情報が流れます。

正しい情報が流れなければ、制度もデータもAIも機能しません。

第二に置くべきものは、「前進し続ける自主自律の精神」

素直さだけでは、組織は自走しません。

助言を受け入れ、問題を認めることができても、次の指示を待ち続けるのであれば、判断は管理者に集中したままです。

そこで、HDGの文化の第二要素として必要なのが、「前進し続ける自主自律の精神」です。

自主自律とは、各自が勝手に動くことではありません。報告や相談を省くことでも、一人で何もかも抱え込むことでもありません。会社の方向と自分の責任を理解し、権限の範囲内で自ら判断し、必要な人と連携し、結果まで責任を持つことです。

HDGでは、職種によって自主性の表れ方が異なります。

営業担当は、顧客からの連絡を待つだけではなく、既存顧客の白地、次の商戦、提案できる商品を分析し、商談の次の行動を自らつくる。購買担当は、依頼された発注を処理するだけではなく、原価、在庫、回転、MOQ、販売可能性まで見て判断する。業務管理担当は、目の前の受注を処理するだけではなく、繰り返すミスの原因を工程から改善する。管理者は、報告を集めるだけではなく、事実、自分の判断、選択肢を持って経営会議に入る。

答えがまだ完全でないとき、自律的な人は、完璧な指示が出るまで止まりません。「今、何が分かっているか」「自分が先にできることは何か」「どこから先は権限を超えるため、支援が必要か」を考えます。

前進し続ける自主自律は、次のような行動として示せます。

自主自律の本質は、全員がすべてを単独で決めることではありません。「上司の指示待ち」を、思考を止める理由にしないことです。

素直さと自主自律は、必ず一緒に持つ

素直さがあっても自主性がなければ、「言われたことには従うが、次の指示を待つ」組織になります。自主性があっても素直さがなければ、行動は速くても、他者の意見を聞かず、それぞれが違う方向へ走る危険があります。

HDGに必要なのは、事実に対して素直であり、行動に対して自主的であることです。

方向が違うと分かったときには、早く認めて修正する。方向が定まった後は、催促されなくても結果まで進める。

私は、この二つをHDG共通の行動循環として、次のように表せると考えています。

事実に向き合う → 素直に受け止める → 自ら次の一歩を決める → 結果に責任を持って振り返る → 経験を制度に変える。

この循環を一度回すたびに、チームは管理者の臨時指示への依存を一つ減らし、組織として動く力を一つ増やしていきます。

HDGにはシステムの土台がある。次は経営能力へ変える

HDGは、仕組みづくりをゼロから始める会社ではありません。

受発注、在庫、出荷、売上にはSCM Plus、顧客と商談にはHubSpot、会計にはMoneyForward、タスク、議事録、SOP、ナレッジにはNotion、正式文書にはSharePointを使っています。そしてClaudeを社内AIハブとして、複数システムの情報を横断的に探し、照合し、分析する取り組みも始まっています。

少人数でより大きな事業を運営していくHDGにとって、この方向は不可欠です。人や会議を増やすだけでは、事業の複雑さを処理できないからです。

しかし、システムが増えたことと、管理能力が高まったことは同じではありません。元データが不正確で、システムごとの役割が曖昧で、同じ情報を何度も入力し、異常時の責任者が決まっていなければ、混乱をデジタル化しただけになります。

今、重要なのはツールをさらに増やすことではなく、それぞれの役割と正しいデータの流れを固定することです。

AIを導入しただけで、組織が自律的になるわけではありません。AIは、その組織がすでに持っているものを増幅します。データと責任が明確なら、効率と判断力を高めます。データが乱れ、責任が曖昧なら、間違いをより速く広げます。

だからこそ、HDGのDXは素直さの文化と同時に進めなければなりません。数字の異常を隠さず、システムで見つかった問題を修正し、AIの出力を人が検証し、一つひとつの誤りをデータと業務プロセスの改善につなげる必要があります。

COCONO撤退から学んだこと――やめる判断も自主経営である

HDGは、成長の過程で事業からの撤退や組織の見直しも経験しました。

COCONO店舗の撤退が示したのは、一つの店舗の成否だけではありません。事業を始める前に、「誰が責任を持つか」「何の数字で判断するか」「どの条件で修正または撤退するか」を決める必要があるということです。

責任者、リアルタイムの数字、撤退基準がなければ、良いアイデアも個人の熱意だけで支える仕事になりやすくなります。結果が想定に届かなかったとき、事実を素直に受け止め、人と資金をより勝てる領域へ移すことは、失敗から逃げることではありません。会社全体に対する責任です。

HDGが目指す自主性には、売上を増やす行動だけでなく、質の低い仕事をやめること、低採算の条件を修正すること、競争上の壁がない市場へ無理に出ないことも含まれます。

前進し続けるとは、同じ道を進み続けることではありません。必要なときに方向を変えることも、前進です。

HDGの未来――社長依存から、事業が自走する組織へ

HDGは、未来に向けた旗を掲げています。

「北海道の食を、世界でいちばん多くの食卓へ。」

北海道産の加工食品、菓子、飲料の輸出において、明確な市場地位を築く。そのためには、短期的な販売量だけを追うのではなく、正規の販売権、自社ブランド、国ごとの販売力、継続可能なBtoB取引を育てなければなりません。

未来のHDGは、今の会社をそのまま大きくした姿ではありません。

単に商品を卸す会社から、産地、商品、物語、販路、物流、取引条件を編集する会社へ。現在の取引から得たキャッシュを、正規取引の信頼と自社ブランドという長期資産へ。情報を一部の人に集中させる組織から、それぞれの事業が目標、損益責任、顧客構造、改善サイクルを持つ組織へ変わる必要があります。

将来の組織では、各事業の責任者が共通ルールに基づき、売上、粗利益、在庫、回収、リスクを管理する。経営会議は報告資料を読む場ではなく、「続ける、修正する、集中する、やめる」をその場で決める意思決定機関になる。社長の時間も、日々の火消しや個別確認から、戦略設計、重要交渉、投資判断、次世代リーダーの育成へ移っていく。

これが、HDGが目指す「管理を少しずつ消す」姿です。

経営者の重要性が下がるのではありません。経営者の価値が、すべての問題を自分で処理することから、自分が細部に入らなくても正しい判断を重ねられる組織を設計することへ変わるのです。

現在から未来へ、HDGが進める三つの転換

1.「あの人が知っている」から「組織が知っている」へ

顧客条件、商品知識、販売許諾、価格判断、出荷時の注意、例外対応を、個人の記憶、メール、チャットだけに残してはいけません。

繰り返す仕事はSOPへ、重要な判断は根拠とともに記録へ、会議の決定は担当者と期限へ、成功はチームの知識へ、失敗は次のチェックポイントへ変えていきます。

担当者が変わっても仕事が続く状態になって初めて、個人の経験は組織の能力になったと言えます。

2.「上司に聞く」から「境界に沿って判断する」へ

自主性とは、判断の境界がない状態ではありません。むしろ、境界が明確だからこそ、社員は安心して動けます。

価格の値引き、顧客補償、在庫処分、支払条件、緊急出荷、クレーム対応などについて、「現場で決められること」「相談が必要なこと」「経営決裁が必要なこと」を明確にする必要があります。

結果責任を求めるのであれば、会社は同時に必要な権限を渡さなければなりません。権限を与えずに結果だけを求めることは、自主管理ではなく、社員へのリスク移転です。

3.「作業を終えた」から「結果と改善に責任を持つ」へ

「顧客へ連絡した」「資料を作った」「システムへ入力した」は行動であり、それだけでは結果ではありません。

確認すべきなのは、商談が次の段階へ進んだか、受注になったか、問題が閉じたか、利益が残ったか、経験が再利用できる形になったかです。

評価も、個人の数字だけでなく、組織への貢献を含める必要があります。売上や粗利益に加え、リスクを早期に発見したか、業務を改善したか、他部門と協力したか、後輩を育てたか、知識を組織に残したかを見るべきです。

管理者は「答えを出す人」から「仕組みを設計する人」へ

社員に自主自律を求めるのであれば、管理者は問題が出るたびにすぐ答えを与えるだけの存在であってはいけません。

まず、次の四つを問いかけることができます。

1. 事実は何か。

2. あなたはどう判断するか。

3. 次に何をするか。

4. 会社にどのような支援が必要か。

この四つの問いは、素直さと自主性を同時に育てます。社員は現状を正直に説明し、自分の判断と行動を示さなければなりません。管理者は代わりに考えるのではなく、判断の質を高める支援をします。

また、管理者は、自分が何度も介入している問題を探し続ける必要があります。同じ問題を毎回自分で解決することは、個人の能力の証明にはなります。しかし、原因を取り除き、次からチームだけで処理できるようにすることが、組織づくりです。

これからのHDGの管理者に必要なのは、目標と優先順位を明確にすること、権限の境界を設計すること、情報の透明性を守ること、人を育てること、本当の例外を処理すること、そして繰り返す問題を制度へ変えることです。

文化を、毎日の会議・報告・評価に入れる

「素直さ」と「自主自律」を、会社案内の言葉で終わらせてはいけません。HDGの本当の文化にするためには、日常の運営へ組み込む必要があります。

1. リスクから報告する。 会議では、良い情報だけで時間を埋めず、差異、リスク、判断が必要な事項を先に扱う。

2. 報告には次の行動を付ける。 事実、自分の判断、次の行動、担当、期限を一つのセットにする。

3. 会議で決める。 経営会議を資料の読み上げにせず、続ける、修正する、集中する、やめるを決める。

4. 繰り返す問題を仕組みに変える。 同じ問題が二度起きたら、SOP、チェックリスト、システム通知、権限設計の必要性を確認する。

5. 結果と改善の両方を評価する。 売上と粗利益だけでなく、データ品質、協力、リスク発見、業務改善、人材育成を見る。

6. 正直な報告を罰しない。 問題を解決したかは厳格に追う一方、最初に事実を伝えた人へ不合理な不利益を与えない。

文化が根づいた証拠は、社員が言葉を暗記したことではありません。管理者が見ていない場面でも、皆が同じ方向の正しい行動を選ぶことです。

会社と社員の双方が、責任を果たす

自走する組織は、社員に「もっと主体的に」と求めるだけではつくれません。

会社は、明確な方向、正しい情報、必要な権限、適切な道具、学ぶ機会、公平な評価を提供する。社員は、自ら考え、早く動き、率直に報告し、学び続け、結果に責任を持つ。双方が役割を果たす必要があります。

会社が目標と権限を曖昧にしたまま、社員の自主性だけを責めることはできません。一方で、必要な情報と権限を持ちながら、すべての判断を上司へ返すことも、自主自律とは言えません。

会社が自律して働ける条件をつくり、社員が行動で信頼に応える。会社が結果に応じて評価と機会を返し、社員が成長をさらに大きな顧客価値へ変える。その循環が、持続する組織をつくります。

おわりに――少数の人が燃え続けなければ動かない会社にしない

私が目指したいHDGは、社長がいなければ判断が止まり、一部の中心メンバーが働き続けなければ維持できない会社ではありません。

全員が会社の向かう先を理解し、同じ正しいデータを見て、自分の責任と権限を知っている。問題は早く見つかり、現場に近い場所で判断され、一人の経験はチームの標準になる。社員の成長が、会社の新しい能力になる。そうした組織です。

「北海道の食を、世界でいちばん多くの食卓へ」という旗を実現するためには、売上規模だけでなく、その規模を支えられる組織が必要です。

だから私は、HDGの文化の第一に「素直さ」を置き、第二に「前進し続ける自主自律の精神」を置きたいと考えています。

素直さは、現実から逃げず、方向を修正する力です。自主自律は、誰かの指示を待たず、前へ進み続ける力です。

信頼できるデータ、明確な制度、共有された文化、一人ひとりの自主自律が結びついたとき、管理者はすべてを催促する必要がなくなります。管理そのものはなくならなくても、システム、業務プロセス、日々の判断の中に溶け込んでいきます。

管理者が仕組みの後ろへ下がり、社員が責任の前へ出る。そして、それぞれの事業が自らの力で成長を始める。

それは管理の終わりではありません。HDGが本当に強い組織になるための始まりです。