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周期を飛び越えるのではなく、周期の中で強くなる

——HDGが歩んできた道から、長期主義・定力・「熬」の意味を考える

最近、企業が景気や市場の周期にどう向き合うべきかを語ったBLOGを読みました。その中で、特に心に残った言葉があります。

企業が周期を乗り越えるために必要なのは、「熬」という一文字である。

中国語の「熬」には、苦しい時間を耐え抜くという意味があります。しかし、ここでいう「熬」は、何もせずに状況が好転するのを待つことでも、間違った事業を意地だけで続けることでもありません。

結果がすぐに見えないときにも長期的な方向を失わないこと。市場が厳しいときにも焦らず、投機や近道に走らないこと。そして、一人ひとりのお客様、一つひとつの商品、注文、納品を、昨日より少し良くしていくことです。

言い換えれば、方向を守りながら、自分たちは変わり続けるということです。

この考えを、2015年の創業から今日までのHDGの歩みに重ねて考えてみました。

周期が試すのは、成長の速さではなく経営の土台

市場が成長しているときには、企業の問題は数字の伸びによって見えにくくなります。

売上が増え、顧客が増え、商品や事業が増えると、会社全体が強くなったように感じます。しかし、市場が調整局面に入り、成長が鈍化し、競争が激しくなり、利益率が下がってくると、それまで隠れていた課題が表に出ます。

売上が伸びた分だけ、利益とキャッシュは残っているか。

仕事が増えた分だけ、組織の能力も高まっているか。

人が増えても、重要な判断が一部の人に集中していないか。

システムを導入しても、確認、転記、検索、再説明に多くの時間を使っていないか。

こうした問題を、すべて外部環境のせいにはできません。周期は、企業の中にすでに存在していた弱点を、はっきりと見せるものだからです。

HDGはこれまで、国内卸売から海外輸出、三国間貿易、自社ブランド、輸入などへ事業を広げ、顧客、仕入先、商品に関する多くの資産を築いてきました。

一方で、事業規模の拡大が、そのまま組織の強さを意味するわけではありません。売上が増えても、すべての取引から適正な利益とキャッシュが生まれているとは限りません。

だから私は、市場が再び良くなるのを待つのではなく、厳しい時期を使って経営の土台を整え直すことが、本当の意味で周期を乗り越えることだと考えています。

長期主義とは、すべてを続けることではない

長期主義は、ときどき「諦めずに続ければ、いつか成功する」という意味で使われます。

しかし、本当の長期主義は、単なる固執ではありません。

やめるべき事業はやめる。利益が残らず、競争上の強みもつくれない取引は見直す。資金と人材を消耗するだけで、将来の価値につながらない機会は手放す。

守るべきなのは、過去の方法ではなく、会社が進む方向です。

HDGが長期的に守るべきものは、北海道の優れた食品とその価値を、より多くの市場へ届けていくという使命です。顧客や仕入先との信頼を積み重ね、正当で継続可能な、利益の残る事業をつくることです。

ただし、そこへ向かう方法は変わり続けなければなりません。

今日売れている商品が、明日も同じように売れるとは限りません。為替、物流、法規制、消費者の価値観が変われば、販売方法も変える必要があります。

長期主義とは、昨日と同じことを繰り返すことではありません。十年先の方向を見ながら、今日の行動を修正し続けることです。

厳しいときほど、焦って判断しない

市場が厳しくなると、人はどうしても焦ります。

他社が新しい市場に参入すれば、自分たちもすぐに参入したくなる。話題の商品があれば、急いで追いかけたくなる。売上が足りなければ、値下げや在庫拡大、低採算取引によって数字をつくりたくなる。

短期的には売上になるかもしれません。しかし、それが会社を強くするとは限りません。

周期の下降局面で最も危険なのは、成長が止まること以上に、焦りから間違った判断をすることです。

HDGに必要なのは、冷静さと危機感を同時に持つことです。

利益が下がったなら、商品、顧客、原価、経費、業務工程を確認する。在庫に異常があれば早く対応する。計画どおり進まない事業については、継続、修正、撤退を判断する。自分の判断が間違っていたなら、素直に認めて行動を変える。

市場を恨まず、問題を隠さず、不安から投機に走らない。

厳しい時期に大きな間違いを一つ避けることは、短期的な機会を一つ得ること以上の価値を持つ場合があります。

「熬」は、立ち止まることではない

市場全体の成長が鈍っても、市場そのものがなくなるわけではありません。顧客も消えません。

ただし、顧客は以前より慎重になり、商品、価格、納期、サービス、信用を厳しく見るようになります。

そのとき企業の差になるのが、日々の細部です。

見積価格は正しいか。販売権や取引条件は確認されているか。MOQ、賞味期限、在庫、原価は正確か。輸出表示や必要書類に漏れはないか。約束した日に納品できるか。問題が起きたとき、お客様へ迅速に対応できるか。

一つひとつは小さなことに見えます。しかし、その積み重ねが会社への信頼になります。

市場が良いときには、機会の多さが能力差を隠してくれます。市場が厳しくなれば、お客様はより信頼できる会社を選びます。

機会が少ないと嘆く前に、昨日よりお客様を深く理解できないか、見積を正確にできないか、リスクを早く発見できないか、お客様の確認や不安を一つ減らせないかを考える。

大きな決断だけが、偉大な会社をつくるのではありません。普通の仕事を、普通ではない水準で長く続けることが、会社を強くしていきます。

小さく進みながら、組織能力を蓄積する

周期に向き合うとき、無理に大きく動く必要はありません。しかし、革新や改善を止めてはいけません。

今のHDGに必要なのは、小さく前進し、継続的に改善することです。

私たちはSCM Plus、HubSpot、MoneyForward、Notion、SharePoint、AIなどを活用しています。ただし、ツールが増えただけで経営能力が高まるわけではありません。

本当に重要なのは、次のような変化です。

これらもすべて「熬」の一部です。

市場が回復してから準備するのではありません。市場が厳しい今だからこそ、データ、業務プロセス、人材、組織を整えるのです。

一日一つ問題を解決し、一週間に一つ仕事の進め方を改善し、一か月に一つ組織の能力を残していく。短期的には目立たなくても、三年、五年、十年と続ければ、簡単にはまねできない力になります。

主業を守りながら、構造的な機会を探す

主業へ集中することは、変化を拒否することではありません。

HDGはこれからも、新しい市場、顧客の隠れた需要、商品構造の変化、自社ブランド、正規販売権など、長期的な価値につながる機会を探す必要があります。

ただし、追いかけるべきなのは一時的な流行ではありません。顧客、利益、ブランド、供給網という資産が残る機会です。

すでに販売実績のある商品を長期的な協業へ変える。顧客が繰り返し求めているものを商品企画へつなげる。一度きりの輸出取引を継続的な販売ルートへ育てる。個人の成功経験を、チーム全体が再現できる方法へ変える。

これらも、HDGにとって大切な革新です。

大きな資金を一度に投じるより、小さく試し、事実で検証し、早く修正する。その繰り返しによって、周期の中でも次の成長機会を育てることができます。

私が考える「熬」の本当の意味

以前の私は、「熬」という言葉に、ただ苦しい時間を我慢するイメージを持っていました。

今は違います。

「熬」とは、方向、節度、行動を伴った長期的な粘り強さです。

同じ自分のまま春を待つことではありません。冬の間に、根を張り直し、キャッシュを蓄え、人を育て、商品を磨き、データを整え、仕組みをつくることです。

そうすれば市場が再び動き始めたとき、慌てて機会を追いかける必要はありません。すでに、機会をつかめる会社になっています。

会社は、長く我慢しただけで自動的に偉大になるわけではありません。

方向を守りながら事実に向き合い、間違いを修正し、無駄な消耗をやめ、自らの能力を高め続けた企業だけが、周期の先へ進めるのだと思います。

HDGの目標も、単に「生き残ること」ではありません。

この時期を通じて、より利益とキャッシュが残り、お客様から信頼され、一人ひとりが自主自律的に動き、少数の人による火消しに依存しない会社へ変わることです。

進む方向が正しく、心が安定し、歩みを止めず、今日が昨日より一歩でも前に進んでいるなら、周期を恐れる必要はありません。

企業を周期の先へ連れていくものは、運ではありません。

長い時間をかけて、一つずつ積み重ねてきた本当の実力なのだと思います。