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本物のリーダーは、一人で最速を走る人ではない

― チームを目的地へ導くために、私が改めて考えた七つのこと ―

『経営者は本物のリーダーであれ』の第三章「チームを作る力」を読み、私は自分の経営を振り返りました。

読みながら何度も考えたのは、会社が大きくなるほど、経営者自身の能力だけでは会社を前へ進められなくなるということです。創業期は、経営者が一番早く判断し、一番多く働き、一番多くの問題を解決することで会社を動かせます。しかし、そのやり方を続けると、いつか経営者自身が会社の成長を止めるボトルネックになります。

本当のチームは、優秀な人を集めただけでは生まれません。共通の目標があり、互いの役割が明確で、違いを認め合い、信頼の上で責任を果たす。その状態をつくることが、リーダーの仕事です。

この章には、チームをつくるための七つの原則が書かれていました。以下では、その内容を私なりに整理しながら、HDGの経営にどう生かしたいかを考えます。

1.信頼関係をつくる――すべてのマネジメントはここから始まる

チームづくりの出発点は、制度でも命令でもありません。信頼です。

信頼がなければ、どれほど正しい目標を掲げても、メンバーは本気では動きません。表面上は指示に従っていても、心の中では「どうせまた変わる」「都合が悪くなったら責任を押しつけられる」「本音を言えば損をする」と感じていれば、組織は最低限の力しか出さなくなります。

私は、信頼は言葉で要求するものではなく、日々の行動から相手の中に積み上がるものだと思います。言ったことを守る。判断の基準を簡単に変えない。間違えたら認める。人によって態度を変えない。耳の痛い報告をした人を責めない。成果だけでなく、そこに至る努力や誠実さも見る。こうした小さな行動の積み重ねが、リーダーの背中に信頼性をつくります。

特に大切なのは、言行一致と首尾一貫です。昨日は挑戦を評価すると言ったのに、今日失敗した人を責めれば、挑戦する文化は消えます。現場を大切にすると言いながら、現場の声を聞かずに決めれば、言葉はすぐに空洞化します。リーダーが発した言葉より、言葉の後に何をしたかを、社員はよく見ています。

信頼されるリーダーは、完璧な人ではありません。自分の弱さや分からないことを認めながらも、大切な価値観から逃げず、約束した方向に歩き続ける人です。

HDGでも、信頼を社風という曖昧な言葉に任せるのではなく、約束、報告、評価、会議、日々の対話という具体的な行動に落とし込みたいと思います。

2.一人ひとりに全身全霊で向き合う――「人材」ではなく、目の前の人を見る

組織では、売上、利益、案件数、人員配置など、数字で考える場面が多くあります。しかし、チームを動かしているのは数字ではなく、一人ひとり異なる感情、経験、強み、弱み、家庭事情、将来への希望を持つ人です。

全身全霊で向き合うとは、何でも社員の希望どおりにすることではありません。まず、その人が何を見て、何を感じ、何を恐れ、何を目指しているのかを、本気で理解しようとすることです。

相手の立場に立って話を聞けば、同じ出来事でも見え方が違うと分かります。経営者には合理的に見える変更が、現場には準備不足の混乱に見えることがあります。上司には簡単な指示でも、経験の浅い社員には失敗の許されない大仕事に感じられることがあります。その差を知らないまま「なぜできないのか」と問うだけでは、信頼は生まれません。

もちろん、話を聞くことは、すべてに同意することではありません。違う意見でも、まず相手の論理と感情を受け止めた上で、自分の考えを率直に伝える。その対話を通じて初めて、相手は「自分は一人の人間として尊重されている」と感じます。

私は経営者として、社員の話を聞く時に、すぐ答えを出そうとしすぎないようにしたいと思いました。結論を急ぐ前に、「何が起きたのか」「本人はどう考えたのか」「何に困っているのか」「本当はどうしたいのか」を聞く。その上で、会社の目的と本人の成長の両方にとって良い道を一緒に考えることが必要です。

人に向き合わずに、チームだけを強くすることはできません。組織とは、結局、一人ひとりとの関係の総和だからです。

3.目標を共有し、一人ひとりの責任を明確にする――協力と責任は両立させる

チームには共通の目標が必要です。しかし、目標を一度発表しただけでは、共有したことにはなりません。

リーダーが同じことを繰り返し伝え、メンバーが自分の言葉で説明でき、日々の仕事と目標がつながって初めて、目標は組織のものになります。「売上を増やす」「顧客満足を高める」という抽象的な言葉だけでは、人によって解釈が変わります。いつまでに、何を、どの水準まで実現し、なぜそれが必要なのかを明確にする必要があります。

同時に重要なのが、一人ひとりの責任です。チームワークを強調しすぎると、「みんなでやる」という言葉の陰で、誰が最終的に責任を持つのかが曖昧になります。全員に責任があるように見えて、実際には誰にも責任がない。これは組織でよく起きる問題です。

だから私は、HDGでは仕事を任せる時に「責任カード」を使いたいと考えています。責任カードには、少なくとも次の内容を一枚で明確にします。

責任を明確にする目的は、人を責めることではありません。本人が自分で考え、判断し、周囲に協力を求めながら前へ進める状態をつくることです。

そして、目標を共有したら、メンバー一人ひとりが「自分の仕事がチーム全体のどこにつながっているのか」を理解できるようにしなければなりません。自分の仕事の意味が分かると、人は作業者ではなく、目的を持つ当事者になります。

4.任せて、評価する――権限委譲とは放置ではない

人は、自分の仕事だと思った時に最も力を発揮します。反対に、上司の指示どおりに動くだけの仕事では、失敗を避けることが中心になり、考える力も成長しません。

だからリーダーは、できるだけメンバー自身に仕事を考えさせ、本人の案で実行させる必要があります。しかし、任せることは「後はよろしく」と離れることではありません。

任せる前に、目的、期待成果、判断基準、期限、権限、相談のタイミングを共有する。途中では、答えを奪うのではなく、問いを通じて考えを深める。終了後には、結果だけでなく、判断の過程、工夫、失敗からの学びを評価する。ここまでが一つの任せる仕事です。

任せ方が曖昧だと、メンバーは「どこまで自分で決めてよいのか」が分からず、結局、何でも上司に確認するようになります。反対に、上司が細部まで指示し続ければ、メンバーは自分の頭で考えなくなります。必要なのは、放任でもマイクロマネジメントでもなく、明確なゴールと適切なチェックポイントです。

また、評価は仕事が終わってから一度だけ行うものではありません。よかった点をその場で認め、ずれが小さいうちに修正し、次の挑戦につながる助言をする。適切な評価がなければ、本人は成功したのか、何が足りなかったのか分からず、学習速度が落ちます。

失敗をゼロにしようとすれば、組織は挑戦しなくなります。致命傷を避ける基準を設けた上で、小さく試し、小さく失敗し、早く学ぶ。その経験を蓄積できるチームこそ、変化に強いチームだと思います。

5.期待し、長所を生かす――人の可能性を早く決めつけない

商売の世界には、最初から何でもできる天才ばかりがいるわけではありません。多くの人は、期待され、仕事を任され、失敗し、助言を受け、少しずつ力を伸ばしていきます。

リーダーが「この人なら、もう一段高い仕事ができる」と信じて関わることは、本人の成長に大きな影響を与えます。逆に、「この人には無理だ」と早く決めつければ、その人は挑戦の機会を失い、本当にできなくなっていきます。

ただし、期待とは根拠のない精神論ではありません。その人の強み、経験、関心、現在の能力を理解し、少し背伸びすれば届く役割を与え、必要な支援と評価を用意することです。

長所を生かす人事とは、短所を無視することでもありません。致命的な弱点は補いながら、その人が最も価値を出せる場所に配置することです。企画が得意な人、顧客との関係づくりに強い人、数字に強い人、現場を整える人、最後までやり切る人。それぞれの強みがつながった時、チームは一人のスーパーマンより強くなります。

私は、社員を見る時に、現在の成果だけでなく、これからどこまで伸びる可能性があるかを見たいと思います。そして期待を心の中に置くだけでなく、「あなたにはここまでできると思っている」「そのためにこの仕事を任せたい」と、具体的な役割として伝えたいと思います。

期待は、リーダーの自己満足ではなく、相手の未来を明るくするための責任です。

6.多様性を積極的に肯定する――違いを消すのではなく、力に変える

人は一人ひとり違います。国籍、人種、性別、年齢だけでなく、考え方、経験、性格、判断の速度、得意分野、生活背景も違います。同じ国、同じ世代の人でも、全く同じ人はいません。

多様性を認めるとは、違いを我慢することではなく、違いがあるからこそチームが強くなると理解することです。全員が同じ考え方なら意思決定は速いかもしれませんが、見落としも同じになります。異なる経験を持つ人がいれば、顧客や市場の変化を別の角度から捉えられます。

特にHDGのように、日本、中国、その他の地域を結び、商品、貿易、小売、物流、地域事業を横断する会社では、多様性はきれいな理念ではなく、経営能力そのものです。

グローバル経営で大切なのは、自分たちのやり方を絶対の正解として押しつけないことです。国や地域の法律、商習慣、顧客感覚を理解し、必要なやり方を変える。同時に、誠実さ、法令順守、顧客を欺かないこと、人を尊重することなど、会社として譲れない原則は守る。この二つを区別しなければなりません。

また、「違いを受け入れる」と言いながら、実際には多数派のやり方に従わせるだけでは、多様性は生かされません。会議で誰の意見が拾われているか、情報がどの言語や方法で共有されているか、評価基準が特定のタイプだけを有利にしていないかまで見直す必要があります。

一人ですべてを完璧にする必要はありません。自分の短所を認め、他の人の長所を借りる。互いに補い合えるからこそ、チームには一人で働く以上の意味があります。

7.勝ちたいと誰よりも強く思い、自己変革を続ける――リーダーが先頭で変わる

最後の原則は、勝つことへの強い意志です。

ここでいう勝つとは、友人や同僚を打ち負かすことではありません。高い目標を掲げ、必要な実行を重ね、顧客に価値を届け、会社と社員が成長し続けられる状態をつくることです。

勝ちたいという気持ちは、まずリーダーが最も強く持たなければなりません。リーダーが本気でなければ、メンバーに本気を求めることはできません。目標を語るだけでなく、難しい場面で先頭に立ち、自分自身が挑戦する姿を見せる。その姿勢がチームの基準になります。

同時に、挑戦が大きすぎると、人は「どうせ無理だ」と感じます。だから高い目標を、小さな実行に分け、小さな成功を積み上げることが重要です。小さな達成が自信となり、次の挑戦へのエネルギーになります。勝ち癖とは、簡単な目標しか選ばないことではなく、難しい目標を前進可能な行動へ分解し、改善を続ける習慣だと思います。

そのためには、リーダー自身が変わり続けなければなりません。過去に成功した方法が、今も正しいとは限りません。事業が変わり、人が増え、世界の前提が変われば、経営者の役割も変わります。自分が全部決めることに安心していた経営者は、他者に任せる力を身につけなければなりません。自分の経験に頼っていた人は、異なる意見を受け入れる必要があります。

私は、リーダーが挑戦を続けるためには、三つの自己管理が必要だと感じました。

経営者の仕事は肉体的にも精神的にも負荷が高いものです。無理を続けて判断力を失えば、社員と会社に影響します。健康管理もまた、経営者が果たすべき責任です。

この章を読んで、私が最も強く感じたこと

この章を読んで改めて感じたのは、リーダーシップは技術だけではないということです。

目標設定、権限委譲、評価制度、会議運営などの方法はもちろん重要です。しかし、その土台には必ず人間性があります。約束を守るか。相手を尊重するか。自分の間違いを認められるか。人の成功を自分の喜びにできるか。自分に不都合な意見にも耳を傾けられるか。こうした日々の姿勢が、制度以上に組織文化をつくります。

経営者の習慣は、やがて会社の習慣になります。経営者が問題を隠せば、社員も隠します。経営者が責任を他人に押しつければ、組織全体が言い訳を始めます。反対に、経営者が正直に向き合い、挑戦を評価し、他者の成長を喜べば、その姿勢も組織に広がります。

私はこれまで、会社を守り、前へ進めるために、自分で判断し、自分で解決することを重視してきました。それは必要な時期もありました。しかし、これからのHDGに必要なのは、私一人が多くの問題を解決することではありません。社員一人ひとりが目的を理解し、自ら判断し、責任を持ち、他者と協力して成果を出せる会社をつくることです。

つまり、私の仕事は「自分が成功すること」から、「人が成功できる仕組みをつくること」へ変わらなければなりません。

HDGで、ここから実行したいこと

読後の感想で終わらせず、次の行動に変えたいと思います。

おわりに

強い会社とは、何でもできる一人の経営者がいる会社ではありません。

互いに信頼し、同じ方向を見ながら、それぞれの責任を果たし、自分で考え、違いを力に変え、成長を続けられる人が集まった会社です。

本物のリーダーとは、永遠に先頭で全ての問題を解決する人ではないと思います。より多くの人が前に出て、責任を担い、目標を実現し、やがて新しいリーダーへ成長できる環境をつくる人です。

私自身も、完成したリーダーではありません。だからこそ、社員に変化を求める前に、自分が変わり続けたいと思います。そして、一人で最速を走る会社ではなく、みんなで遠くまで行けるHDGをつくっていきたいと思います。